ゲームを起動するたびにロード画面で長く待たされてイライラする…そんな経験はないでしょうか?
大作ゲームやオープンワールドでは、シーン切り替えやファストトラベルのたびに数十秒の待ち時間が発生し、ストレスを感じることもあります。
しかし近年登場した新技術「DirectStorage」によって、PCゲームのロード時間が劇的に短縮される可能性が出てきました。
本記事ではDirectStorageとは何か、ゲームの読み込みが速くなる仕組み、従来のロード処理との違いや技術的なポイント、実際の効果、そして利用するための対応環境と注意点までを解説します。
遅いロード時間に悩んでいるゲーマーの方は、ぜひ最後まで読んでみてください。DirectStorageがどのようにゲーム体験を向上させるのか、一緒に見ていきましょう。
DirectStorageとは?ゲームの読み込みが速くなる理由
DirectStorageとは、Microsoftが提供するゲーム向け高速ストレージアクセス技術です。
平たく言えば、PlayStation 5やXbox Series X|Sなど最新コンソールに搭載されている超高速データ読み込み機能をPCにも実現するための機能だと考えてください。
最新コンソールではSSDや専用ハードウェアによってゲーム起動やファストトラベル時のロード時間が大幅に短縮されました。DirectStorageはその恩恵をWindows PCにもたらし、PCゲームのロードを飛躍的に高速化することを目指しています。
ゲームの読み込みが速くなる理由は、データ読み込み経路のボトルネックを解消したからです。従来のPCでは、ストレージから読み出した圧縮データを一旦メモリに置き、CPUで解凍してからGPUに渡すという手順を踏んでいました。
この過程では何度もデータをコピーするオーバーヘッドが発生し、NVMe SSDのような高速ドライブを使ってもCPU側の処理が追いつかず、ロード短縮効果が頭打ちになっていたのです。
DirectStorageではこの流れを一新し、圧縮データを直接GPUに送り、GPU側で展開(解凍)することでCPUの負担と無駄なデータコピーを大幅に削減します。つまり、データを「最短距離」で読み込めるため、ゲームのロードが格段に速くなるというわけです。
従来の読み込み処理の課題
DirectStorageが登場する前、従来のPCゲームのロード処理にはいくつかの問題点がありました。
CPUでの解凍処理の負荷
ゲームデータは圧縮されているため、CPUがこれを解凍します。この展開処理に時間がかかり、ロード時間を延ばす要因となっていました。
データコピーのオーバーヘッド ストレージ→メモリ→VRAMと複数段階でデータを転送する際に、何度もコピーが発生していました。この無駄な処理がロード全体を遅くする一因でした。
高速ストレージを活かしきれない SATA SSDやHDDに比べ高速なNVMe SSDを搭載しても、CPU側がボトルネックとなり、ロード時間の短縮はせいぜい数割程度に留まっていました。
NVMeの理論性能をゲームで実感しづらい状態だったのです。
DirectStorageの技術的なポイント
では、DirectStorageが具体的にどのように高速化を実現しているのか、その主な技術ポイントを見てみましょう。
GPUでデータ解凍 DirectStorageでは、圧縮データの展開処理をCPUではなくGPUが担当します。GPUは並列演算に優れており、大量のデータを高速に解凍できるため、ロード処理が効率化されます。
またCPUの負荷も軽減され、その分他のゲーム処理にリソースを回せます。 高効率な圧縮フォーマットDirectStorageではGDeflateと呼ばれるGPU向け最適化の圧縮技術が採用されています。
従来より高い圧縮率でデータサイズを削減でき、同じゲーム資源でも転送量を大幅に減らせます。例えばNVIDIAのデモでは、4Kテクスチャを通常より約44%小さいサイズに圧縮できたと報告されています。データが小さければコピー時間も短くて済み、結果として読み込みの高速化につながります。
NVMe SSDの性能を最大活用 DirectStorageは高速なNVMe SSDの帯域をフルに引き出せるよう最適化されています。従来のAPIでは単一スレッドでの読み込みなど制約がありましたが、DirectStorageでは多数のI/O要求を並列処理することでGB/s級の転送を可能にします。
実際、NVMe SSDでのデータ読み込み速度が従来の約2.8GB/sからDirectStorage使用時には約4.8GB/sへ70%向上した例も報告されています。こうした高速I/Oによりストレージ側の待ち時間が大幅に減り、ロード時間短縮に直結します。
実際にどのくらい速くなるのか?
実際のDirectStorage対応ゲームでは、ロード時間がどれほど短くなるのでしょうか。
初めてDirectStorageに対応した『FORSPOKEN』では、大容量のシーン読み込みが約10秒からわずか2秒前後にまで短縮されました。実際のデモでも5.5GBものゲームデータを約1.9秒で読み込んでおり、従来では考えられない速さです。
Microsoftの発表によれば、DirectStorage対応ゲームではロード時間が平均で20~40%短縮するとされています。従来はNVMe SSDでもSATA SSDと比べてロード時間の差は僅かでしたが、DirectStorage対応タイトルではその差が一目瞭然です。
例えば『FORSPOKEN』では、NVMe SSDならファストトラベルがほぼ瞬時に完了する一方、SATA SSDでは従来通り数秒のロード画面が発生しました。
DirectStorage対応NVMe環境が従来とは一線を画していることが見てとれます。
対応環境と注意点
では、このDirectStorageの恩恵を受けるにはどのような環境が必要か、注意点と併せて確認しておきましょう。
対応OS
Windows 10(バージョン1909以降)または Windows 11
Windows 10でもDirectStorage自体は利用可能ですが、Windows 11の方が対応APIが充実しており最適化されています。
可能であればWindows 11環境で利用するのが望ましいです。
ストレージ
NVMe接続のSSD
DirectStorageは高速なNVMe SSDでのみ機能します。ゲームをSATA接続のSSDやHDDにインストールしている場合、DirectStorageは有効になりません。
恩恵を得るには、ゲームデータをNVMe SSD上に置くようにしましょう。
GPU
DirectX 12対応のグラフィックスカード
DirectStorageはDirectX 12世代のGPUであれば動作します。
目安として、NVIDIAならGeForce GTX 16シリーズ/RTX 20シリーズ以降、AMDならRadeon RX 5000シリーズ以降のモデルが対応しています。
極端に旧世代のGPUでない限り心配はいりません。
ゲームタイトル
DirectStorage対応のゲームソフト
ゲーム側がDirectStorageに対応していなければ、この機能は恩恵を発揮しません。
現状では対応タイトルが限られており、『モンスターハンターワイルズ』や『ファイナルファンタジーXVI』など最新のゲームに限定されますが、今後徐々に増えていくと期待されています。
お使いのゲームが対応しているか確認してみましょう。
なお、お使いのPCがDirectStorageに対応しているかは、WindowsのXboxゲームバー設定内「ゲーム機能」の項目で確認できます。NVMeドライブと対応GPUを搭載していれば「DirectStorageが有効」と表示されるはずです。
まとめ:DirectStorageはゲーム体験を一段階引き上げる
DirectStorageはゲームのロード時間に革命をもたらす画期的な技術です。
データ読み込みのボトルネックを取り除くことで、これまで長かったロード画面を大幅に短縮し、プレイヤーを待たせません。
高速ストレージと強力なGPUを活かして、ゲーム世界への没入感を損なわないスムーズな体験を提供してくれます。
まだ対応タイトル数は少ないものの、今後DirectStorageが普及すれば「ロード時間を気にしない」ことが当たり前になるでしょう。
大容量データを扱う最新ゲームでも、DirectStorage対応PCならハードウェア性能を最大限に発揮できます。
ゲーム体験を一段階引き上げるDirectStorageの恩恵を、ぜひあなたの環境でも体感してみてください。
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