MENU

WD_BLACK SN7100とSN850X 徹底比較:性能・用途別の選び方

高速なNVMe SSDが当たり前になった今、自作PCやゲーム機のストレージ選びにも悩みが生じています。

Western Digitalのゲーマー・クリエイター向け高性能SSDブランド「WD_BLACK」シリーズからは、性能重視の最上位モデルSN850Xと、省電力重視の新モデルSN7100という注目SSDがラインナップされています

それぞれ一長一短があり、どちらを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。

本記事では両モデルの性能・価格・特徴を徹底比較し、用途別に最適なSSDを選ぶためのポイントを解説します。

目次

結論:SN7100とSN850X どちらを選ぶべきか?

結論から言えば、両者ともPCIe 4.0対応の高性能NVMe SSDですが、その特徴から選ぶべきユーザー像が異なります。

SN7100は最新世代の省電力・高効率モデルで、ノートPCや携帯ゲーム機など熱と消費電力を抑えたい環境に最適です。

一方、SN850Xは前世代のフラッグシップモデルで、デスクトップPCやPS5など最高性能を求める用途に向いています。

価格面では発売時期の違いから変動がありますが、一般的にSN850Xの方が割安になりやすく、コスト重視なら有力な選択肢です。ただし省電力性や新技術を重視する場合はSN7100が魅力です。

WD_BLACK SN7100とSN850Xの概要・位置付け

まずは両モデルの基本的な位置付けと特徴を整理します。

WD_BLACK SN850Xについて

2022年に登場したWD_BLACKシリーズのフラッグシップSSDです。

PCIe Gen4対応で、当時最高クラスの速度を誇ります。8TBまで容量展開があり、ヒートシンク付きモデルも存在します。

ゲーマーやクリエイター向けに設計され、高い連続性能とDRAMキャッシュによる安定性が持ち味です。

また、「Game Mode 2.0」というゲーム向け最適化機能も搭載され、ゲームのロード時間短縮に貢献します。

WD_BLACK SN7100について

2024年末に登場した最新モデルです。

WD_BLACK SN770の後継に位置付けられ、PCIe Gen4対応ながら消費電力の大幅な削減と高速化を両立したモデルです。

4TBまでの容量があり、DRAMレス(DRAMキャッシュ非搭載)設計ですが、新世代の218層NANDフラッシュメモリと独自コントローラにより高性能を実現しています。

特に小さなファイルのランダムアクセス性能が大幅に向上しており、OSやアプリの起動も非常に高速です。「モバイル機器にも最適なゲーミングSSD」として打ち出されました。

以上のように、SN850Xは旧世代の最高峰、SN7100は新世代の高効率モデルという位置付けです。次章では具体的なスペックや性能の違いを見ていきましょう。

性能の比較:スピードとレスポンス

WD_BLACK SN7100とSN850XはいずれもPCIe 4.0 x4接続に対応し、カタログ上の最大転送速度は非常に近い値です。

シーケンシャル読み取り速度比較

SN850Xが最大7,300MB/秒、SN7100は最大7,250MB/秒とほぼ同等です。読み取りに関しては体感差はほとんどないでしょう。

シーケンシャル書き込み速度比較

SN850Xが最大6,600MB/秒、SN7100は最大6,900MB/秒と、むしろSN7100の方がわずかに高速です。最新NANDの恩恵で書き込み性能に余裕があります。

実際のベンチマークでも、両者とも7,000MB/秒超えの驚異的な速度を叩き出しており、単純な読み書きの速さでは差はごくわずかです。一般的なゲームのロード時間や大容量ファイルのコピーにおいて、両者の差は数秒程度以内に収まることが多いでしょう。

もっとも、最新技術であるDirectStorage対応ゲームのようにストレージ性能がボトルネックになり得る場合には、両者のような超高速SSDを用いることでロード時間がさらに短縮される可能性があります。ただしSN7100とSN850Xといった同等クラス同士では、そうした場面でも体感できる差はごく僅かでしょう。

一方、ランダムアクセス性能(4Kランダム読み書き時のIOPS)には若干の違いがあります。スペック上はSN850Xのランダム読み取りが最大1200K IOPSとSN7100の1000K IOPSより高く、逆にランダム書き込みはSN7100が1400K IOPSでSN850Xの1100K IOPSより高い値を示しています。これはそれぞれのコントローラ設計やDRAM有無による特性の差です。

ただし実際のPC使用における体感では、両者とも極めて高速な部類であり、Windowsの起動やアプリの立ち上げ、ゲームのマップ読み込みなど日常的なマルチタスクではいずれもキビキビと動作します。特にSN7100はDRAMレスながら最新技術によって小さなランダム読み書きが最適化されており、細かなファイルアクセスが頻繁な場合でも遅延の少ない応答を示します。

電力効率と発熱:SN7100の強み

シングルパッケージのNANDを採用し、片面実装の省エネ設計が特徴です。

性能が拮抗する両モデルですが、消費電力と発熱の面ではSN7100に軍配が上がります。SN7100はWDが「携帯デバイスでも使えるゲーミングSSD」として開発した経緯があります。そのため、最大消費電力は約4.5W前後に抑えられています。アイドル時の低消費電力性も優秀で、ノートPCなどでバッテリー駆動する際にもエネルギー効率が高いです。

一方のSN850Xは高性能を優先した設計のため、最大消費電力は7W前後とやや大きめです。アイドル時も1W程度の消費があり、SN7100と比べると電力効率では劣ります。このため、デスクトップPCやPS5のように電源と冷却に余裕のある環境で本領を発揮するモデルと言えます。

発熱についても、SN7100は発熱を抑えるチューニングが施されており、長時間負荷をかけても温度が上がりにくい傾向があります。

SN850Xは高速ゆえにコントローラが高温になりやすく、ヒートシンク無しで酷使するとサーマルスロットリング(熱による速度低下)が発生する可能性があります。そのため、デスクトップ用途でも可能ならヒートシンク付きモデルやマザーボード備え付けの冷却機構を活用するのがおすすめです。

DRAMキャッシュと内部構造の違い

WD_BLACK SN850XとSN7100では、内部アーキテクチャにいくつかの相違点があります。大きなポイントとなるのがDRAMキャッシュの有無です。

SN850XはDRAMキャッシュ搭載モデルです。専用のDDR4メモリチップを内蔵しており、フラッシュメモリへのアクセスを高速化・最適化しています。これにより、大容量データの連続書き込みや長時間の負荷でも安定したスループットを維持しやすいのが強みです。

SN7100はDRAMレス設計です。SN770と同様にコストや省電力を優先し、オンボードのDRAMを省いています。その代替としてホストメモリバッファ(HMB)機能を使用し、必要に応じてシステムのRAMの一部をキャッシュ領域として活用します。また、新しいNANDフラッシュの高速化により、DRAMが無くても高いランダム性能を実現しています。

さらにフラッシュメモリ自体も世代が異なります。SN850Xが搭載するNANDが112層のBiCS5世代TLCであるのに対し、SN7100は最新の218層BiCS8世代TLCを採用しています。新世代フラッシュは記録密度が高く、同じ容量でもチップ数を減らせます。その結果、SN7100では1TBや2TBモデルでも基板上のフラッシュチップが1つだけという構成も可能になりました(片面実装を可能にする要因です)。一方SN850Xは同容量で複数のチップを搭載し、加えてDRAMチップも載せているため、基板上の部品点数は増えます。

コントローラに関して公称の詳細スペックは公開されていませんが、推測ではSN7100は4チャンネル高速I/Fのコントローラ、SN850Xは8チャンネル低速I/Fのコントローラといった設計になっているようです。いずれもPCIe 4.0の帯域内で最適化されていますが、この違いが先述のランダム性能特性(読み取りと書き込みでどちらが強いか)の差につながっている可能性があります。

総じて、SN850Xは従来型の“パワフルな高性能SSD”、SN7100は最新技術で効率を追求したスマートなSSD”と言えるでしょう。

価格動向とコストパフォーマンス

性能や機能だけでなく、実際に購入する際は価格も重要な要素です。SN850XとSN7100は発売時期が約2年ほど離れていることもあり、市場価格に差があります。

SN850Xはフラッグシップモデルとはいえ発売から時間が経っており、2023年〜2024年にかけて価格が徐々に下がりました。2025年現在では、同容量ならSN850Xの方がSN7100よりも安く買える場面も多く、値下がりしたハイエンドSSDとしてコストパフォーマンスが光ります。とくに在庫処分セールや特価販売では、驚くほど手頃な価格になっていることもあります。

SN7100は登場したばかりの最新モデルなので、初期価格は比較的高めに設定されています。発売直後は性能の割に価格がSN850Xより高いという指摘もありました。しかし徐々に価格改定やセールが行われ、容量や時期によってはSN7100も手頃な選択肢になりつつあります。またSN7100には500GBモデルが存在し、より低予算で最新モデルの恩恵を得ることも可能です(※SN850Xは最小容量1TB)。

長期的な視点では、SN7100は省電力による電気代節約や発熱抑制による寿命延長(高温による部品劣化の低減)といった間接的なコストメリットも期待できます。一方、現時点で容量あたりの単価重視で選ぶなら中古も含めSN850X有利な状況が散見されます。購入の際は最新の価格動向をチェックし、コストパフォーマンスも比較すると良いでしょう。

用途別のおすすめ:あなたに合うのはどっち?

デスクトップPC用途:SN850Xが本領発揮

デスクトップ環境なら、WD_BLACK SN850Xが本領を発揮します。最高クラスの連続性能とDRAMキャッシュによる安定性で、ゲームから動画編集などのクリエイティブ作業までヘビーな処理を存分に支えます。冷却さえきちんとすれば長時間高負荷でもスロットルがかかりにくく、トップスピードを維持できるでしょう。価格面でも容量が大きいモデルほど割安なので、2TBや4TBで大量のゲームやデータを抱えるデスクトップ用途に最適です。

もちろんSN7100でもデスクトップで十分高速に動作しますが、せっかく電源や冷却に余裕のあるPCなら、あえて省電力モデルを選ぶメリットは薄めです。価格が近いならSN850X、あるいはさらに上位の最新世代(もしPCIe 5.0対応SSDなどを検討できるならそちら)も選択肢に入れて良いでしょう。

ノートPC・モバイル用途:SN7100が断然おすすめ

ノートパソコンや小型フォームファクタのPC、さらにはSteam Deckのような携帯ゲームデバイスにストレージを増設するなら、WD_BLACK SN7100が断然おすすめです。低発熱・低消費電力であるため、筐体内の温度上昇を抑えつつバッテリー駆動時間への影響も最小限にできます。しかも速度はハイエンド級なので、ハイパフォーマンスなノートPCの潜在能力を十分に引き出せます。容量上限が2TBまでですが、多くのノートPC用途では十分なサイズでしょう(それ以上必要であれば外付けストレージ等で補完可能です)。

逆に、SN850Xを熱処理の厳しいノートに搭載すると、発熱でスロットリングが発生したり排熱ファンが常時高速回転してしまう恐れがあります。ノートPCの寿命や安定動作のためにも、熱と消費電力を抑えたSN7100の方が安心です。

外付けドライブ・ファンレス環境:SN7100の省エネが有利

USB接続の外付けNVMeケースに入れてポータブルSSD化するような場合も考えてみましょう。この用途では発熱がよりシビアになるため、SN7100の方が適しています。小型のアルミ筐体に収めてUSB4/Thunderbolt接続するケースでは、SN850Xだと高負荷時に熱々になりスロットルがかかる可能性があります。SN7100なら比較的熱が穏やかで、長時間の連続書き込みでも安定しやすいでしょう。

また、リビングの小型PCやファンレスPCなど冷却が限定されるシステムでも、SN7100の省エネ性能が安心感につながります。逆に、水冷を施したデスクトップやサーバー構築などで高速ストレージを複数本用いる場合は、総合性能重視でSN850Xを選択しても良いでしょう。

まとめ:最新効率モデル vs 実績ある高性能モデル

WD_BLACK SN7100とSN850Xの比較を総括すると、「最新技術による効率性」を取るか「実績あるハイエンド性能」を取るかという選択になります。

どちらも日常のあらゆるシーンで高速なストレージ体験を提供してくれる点では共通しています。

具体的には、モバイル環境や省エネ重視ならSN7100、デスクトップやコンソールで最大性能を引き出すならSN850Xが適任です。また、価格重視でセール品を狙う場合はSN850Xが有利な局面が多く、新モデルの価値を重視するならSN7100に投資する意義があります。

自分のPC環境や用途、そして重視するポイント(性能か効率かコストか)を整理すれば、おのずと選ぶべきモデルが見えてくるでしょう。この記事の比較が、皆さんのSSD選びの一助になれば幸いです。

最後に付け加えるなら、どちらを選んでもWestern Digital製ならではの高い信頼性と耐久性に加え、5年間のメーカー保証が付いてきます。大切なデータを預けるストレージとしての安心感があるのも、両モデルに共通する魅力と言えるでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次